2009年9月12日付け、The Economist誌に掲載されたインドネシア特集の最終回です。これまで24回にわたって掲載してきました。途中出張が入ったりして必要以上に細切れにしてしまったこともあり、こんなに長い連載になってしまいました。
今日掲載する記事は、今までの総括記事です。そこで私も自分なりのまとめをあわせて書いてみようと思います。
この特集を読む前の私のインドネシアに対する印象は、人口が多い、イスラム教徒が多い、自然資源が豊富、汚職が蔓延している、交通渋滞がひどくインフラが整っていない、といった感じのものでした。大国でありながら何か今ひとつ力を発揮できていない、といった感じも持っていました。
この特集の一番最初の記事のサブ・タイトルは、「Just a decade ago Indonesia was on the brink of catastrophe. Things have taken a dramatic turn for the better…」でした。これだけ長い特集を訳すことを決めたのは、私が住んでいるシンガポールの隣国に対する関心だけではなく、著しく変わっているところは何だろうか、という素朴な疑問でした。
ここで、改めてこの特集に含まれた記事の一覧を示しておきます。
1. A golden chance(http://merlion0520.jugem.jp/?eid=192)
2. More of the same, please (http://merlion0520.jugem.jp/?eid=193)
3. Things do not fall apart (http://merlion0520.jugem.jp/?eid=200)
4. Tolerance levels (http://merlion0520.jugem.jp/?eid=202)
5. Surprise, surprise (http://merlion0520.jugem.jp/?eid=206)
6. Not making it easy (http://merlion0520.jugem.jp/?eid=220)
7. A deep-rooted habit (http://merlion0520.jugem.jp/?eid=224)
9. Everybody’s friend (http://merlion0520.jugem.jp/?eid=237)
一つ目の記事では、インドネシアは外国の人が考えるよりもうまく行っており、問題なのは国が外国に与えているイメージだとしています。ヨドヨノ大統領の元で政治的にも安定してきており、また将来の発展を支えるに足りる人口構成を持っています。
二つ目の記事では、これを受けてうまく行っている背景としての政治的な安定を掘り下げます。前回の大統領選挙の背景や登場人物などの説明が加えられており、確かに政治的には混乱はなくなってきているように思いました。ここまで訳した段階では、確かにインドネシアは非常に良い国になってきている印象を受けました。
これ以降の記事はそれぞれがインドネシアが抱えている問題の指摘と現状の分析を行っています。八つ目の記事に至るまであまりに問題が多すぎて、この特集の始めに「著しく良い方向に変わってきている」という記載が行われていたことを忘れ、この特集がインドネシアの問題点の指摘をした上で、まだまだ改善が必要だ、という主張を繰り返しているようにすら思えました。指摘された問題点は以下の通りです。
独立問題と地方への権限委譲 (#3)
宗教的な対立 (#4)
予算配分が不適切 (#5)
インフラ、サービス産業の欠如 (#6)
温暖化の温床 (#7)
本日掲載する記事でこれらの問題に関しても進展はしており、インドネシアが大きく発展する可能性はこれまでになく高まっているとしています。しばらくしたらもう一度全体を読み直してみたいと思いますが、この記事を読んでインドネシアに対して非常に良い印象を持てる人は少ないのではないかと思います。
=========================== (本文) =========================
Everybody’s friend みんなの友人
インドネシアはもっといい印象に値する
それ以外のほとんどの点でインドネシアの民主主義にとって今は黄金時代である。近隣諸国に対する対応が神経質になることが時折ある。海上境界線から移民労働者の取り扱いまで全てのことで小競り合いを行うマレーシアに対しては特にそうである。地域の中で富が集まり、しばしばインドネシア司法当局からの逃亡者の逃げ込み場所となるシンガポールに対する不快感は常に存在し続けるだろう。しかし両国とも東南アジア諸国連合(ASEAN)においてインドネシアのパートナーでもあり、最も親密な仲間である。インドネシアは概してあらゆる国と懇意にしている。
その国際的な地位は上昇している。先行する新興市場がBRIICという集まりになるための順番待ち応募者であることは別にして、インドネシアはG20各国のグループのメンバーであり、世界を運営していく上でより一層責任を取るようになってきている。同国はイスラム過激派に対する民主的な防護壁であり、アメリカにとって不可欠な同盟国と見られている。ヒラリー・クリントンは国務長官としての最初の外国訪問のなかにインドネシアを含めた。ジャカルタの学校で4年間を過ごしたバラク・オバマ大統領はおそらく11月に訪問することになる。すでに述べたとおり、中国やインドもインドネシアに言い寄ってきている。日本や欧州連合も同様で、安全上の理由からインドネシア航空会社4社に対する禁止措置を撤廃し、大きな刺激となる要因を取り除いた。
東南アジアで最も人口が多い国であり、経済規模が最大であるため、インドネシアはASEANの中で支配的な役割を常に担ってきた。この連合は1967年に戦争の寸前まで行ったマレーシアとの対峙の後インドネシアを含んで設立された。しかしスハルトの下、インドネシアはASEANの公の顔としてではなく拒否権を利用してこっそりと主導権を握ってきた。今ではより自己主張が強くなってきている兆候はあり、良い方向に向かっている。域内の民主主義と人権について出張を行っている。これは、域内において、特にミャンマーに対しては、目立たないように主張することですらあまり頻繁には見られないものである。
ASEANがより強大な経済的なつながりを持つ方向に遅々として進まない中、インドネシアは遅ればせながら自身を地域のハブとしての役割に就かせる機会を手にしている。当局筋は、ドイツのフォルクスワーゲンがASEAN市場向けの自動車の組み立てをジャワで行うことを今年決めたことを好んで指摘する。その主張の根拠には、国内市場の規模を考えると、インドネシアはASEANの中に基盤を作り、そこから域内の市場を攻めようとする海外投資家にとって、インドネシアを選択することは論理的な帰結であるということがある。しかしこれまでのところ、インドネシアがそのような役割に選ばれることは稀だ。
この報告ですでに触れた事業を行ううえでの一連の障害がひとつの理由だ。蔓延する汚職と行政の混乱を伴った不合理なナショナリズムからぞっとするようなインフラがあげられる。インドネシアの印象も別の問題である。リスクが高く不安定な場所であると外部で考えられることから不公平なほど損失をこうむってきた。周辺のカシミールから中央での毛沢東主義のナクサル党まで、より暴力的で手に負えないほど反政府活動が見られるインドとの比較は有益である。同国はまたより頻繁に流血を伴うテロリストの攻撃の餌食になっている。核で武装された隣国との緊張感の高い関係もある。しかし、インドネシアとのありのままの比較では、インドは安定がしっかり守られた場所だと考えれている。
他方で、インドネシアの思想家の中には、ASEANの先を思い描いている人もいる。ジャカルタのシンクタンク、戦略的国際情勢研究センター(Centre for Strategic and International Studies)のリザル・スクマはASEAN内の隣国との良好な関係だけが国家の関心事であるべきではない、と言う。彼は「脱ASEAN外交政策」を要求する。これは域内の国が示す警戒に対する不満とインドネシアがもっと社会的地位のある状態を受け入れる感覚を反映するものだ。
幸運なことにきっとそうなるだろう。長きに渡る独裁と経済の崩壊状態から回復するための著しい力を示してきた。民主的な変化、イスラムに対する寛容性、貧困の撲滅、急速な経済発展の模範となる可能性がある。
この報告が示したように、これら全てが今のところは進行中といったところだ。経済の自足可能な反映と政治の安定が結びついた目標を達成するために未だもがき続けている。しかし、少しずつ前進をし続けており、達成できる可能性は今までになく高くなっている。
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