11月16日にFinancial Timesに掲載された記事です。
航空会社がデリバティブの標準化および決済機関を通して決済されることに対して反対の意見を表明しています。前者に関しては店頭デリバティブが提供していた柔軟性が失われることで各社が負っている様々なリスクに対応できなくなることが理由です。本当にそうなのか、と勘ぐりたくなります。昨年、ジェット燃料が高騰する中で少しでも費用を安くしようと同じ内容の取引に走り、結果としてほとんどの会社が損失を被りました(http://merlion0520.jugem.jp/?eid=183)。リスクを十分に考察することなく、投資銀行が提案してきたままのものをそのまま受け入れた、と考えられても仕方がないと思います。システム面から見ても航空会社のリスク管理体制は万全とはとてもいいがたい状況です。デリバティブの柔軟性を維持することを主張するのであれば、まずは自らの体制を見直し、自分のためにテーラーメードで作られるヘッジ戦略は本来コストがかかるものだということを認識する所からはじめるべきではないかと思います。
2009年11月13日付けのFinancial Timesに掲載された記事です。
会計原則は投資家が投資判断をするにあたって企業の状況に関して十分な情報の提供が保証されるように変更を加えられてきました。今回の金融危機を通じて金融機関の開示が十分であったかどうかは議論の対象となってきています。その中で銀行の資産を時価評価することで透明性をあげようとする考えが進んできました。この記事にもあるとおり、一部の金融機関からは資産の価値が増減しすぎてかえって金融危機を招く、といった主張があります。なんだか本末転倒である気がします。市場の動きによって収益が大きく変わるものを保有しながら、その影響を開示すると市場が不安になる、といった主張をしているように思います。だったら市場を不安にするようなものをそもそも持たなければ良いのではないかと思います。今すぐに時価会計を適用すると一時的に出さえ大きな損失が出るから、というのが反対の理由であるなら、一度は膿みだしをしてきれいなバランス・シートにすることも考えるべきなのではないでしょうか。
(個人的な話になりますが、今週ははっきり言ってこのブログはかなり手を抜いてしまいました。先週末にまとめて訳したものを切り出しにして済ましていました。今週はバンコクに出張で毎日打ち合わせが続いたことが一番の原因です。お詫びといってなんですが、バンコクのデリバティブ事情を少々。過去1年以上にわたってデリバティブを敬遠する動きが続いていたのですが、ここに来て地場銀行の多くが外資系からトレーダーをスカウトしたり、システムの強化をしながらデリバティブから手数料収入を得るための用意を始めているようです。デリバティブの営業体制の強化を図っている銀行も見受けられました。しばらくの間影を潜めていた外資系の金融機関も改めて採用を開始して収益拡大に走り始めています。デリバティブのソフトウェアを販売している私にとっては来年はバンコクは主戦場となりそうな予感です。)
2009年11月6日にFinancial Timesに掲載された記事です。
そこまで費用をかけてでもデリバティブって必要なのか?って疑問を持ちたくなります。規制をかけるのではなく、デリバティブの参加者が何をやろうとも経済には影響が及ばないような方向で考えることはできないのでしょうか。私自身、デリバティブを悪だとは思ってはいません。適切に管理して利用される分には便利なものです。でも、投資銀行がそれを使って儲けの源泉にしていることも事実です。一部の産業の儲けの源泉を確保し続けるためにここまでの費用をかけなければいけないとすると、それに見合った見返りを社会全体で受けることができるのでしょうか。
デリバティブを使って事業会社ができることは、費用・収益の平準化です。デリバティブを使ったからといって特定の費用が常に安価に抑えられるわけでもないですし、特に大きな収益を安定的に得られるわけでもありません。航空会社を考えて見ましょう。燃料費のヘッジのためにいろいろなデリバティブを使っています。その上に燃料サーチャージと言う形で利用者にコストの負担を求めています。デリバティブを使ってもコストの平準化ができず、消費者に負担を求めるような状態では、そもそも国民の税金を使ってデリバティブの市場を維持し続ける根拠はどこにあるのでしょうか。
今回のような問題を起こさないため、というのであればデリバティブ自身が金融機関にとってではなく、規制の費用を負担しなければいけない納税者にとってどのような利益が及ぼされうるのかをもう一度考えてみる必要はないでしょうか?
2009年11月5日にFinancial Timesに掲載された記事です。
いろいろと問題を抱えた銀行を避けて取引先としてブローカーを選ぶ動きが出てきているそうです。銀行が問題を抱えていることもひとつの要因だとは思いますが、取引の内容が比較的シンプルなものになってきていることもブローカーで用が足りてしまう理由だと思います。以前に比べて市場で取引されるデリバティブの複雑さは明らかに落ちてきています。かつてはテイラー・メードの取引を組成してもらうために銀行に頼る必要があったと思いますが、今では取引の主流が単純なオプションしかも年限が比較的短めなものになってきているため、ブローカーを通じて比較的簡単に取引相手が見つかるということになってきたのではないでしょうか。
取引をある程度標準化するという意味では、現在議論されているように取引所や決済機関を通す必要が必ずしもあるわけではなく、ブローカーの役割を見直して、その重要性をあげてみるというのも手ではないかと思うのですが、いかがでしょうか?
11月2日にFinancial Timesに掲載された記事です。昨日掲載した記事の続編です(http://merlion0520.jugem.jp/?eid=264)。モルスタを訴えている中国企業の株主としてゴールドマンがいるとなると、そこからデリバティブの評価に対する助言が行われているのではないかと勘ぐりたくなります。ただ、当のゴールドマンも別の会社と同じ問題に関して交渉中で、モルスタの訴訟の行方がそちらの交渉に影響を及ぼすことになるというのは皮肉なものです。
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